とある事情で歌入りのCD音源からボーカルを消した音源が必要になった方がおられたので、ボーカルをカットする作業をお手伝いさせていただきました。
CD音源から音質の劣化無しでボーカルだけを完全に消してしまう作業は基本的には不可能です。
カラオケの練習用などでボーカルを消してしまうアプリやそのような機能があるCDプレイヤーなどもありますがやはりそれも完璧ではないのでそこそこ消える場合もある反面、全く効果がない場合も多く効果がない場合は楽曲に合わせて手作業で編集してゆくことになります。
ご依頼いただいた音源は自動ツールなどでは全く効果がない部類の音源でした。
今回の要件では、音の劣化があっても良いのでとにかくボーカルの存在感を消してくださいとのことでした。
まずは定番の方法としてボーカルがセンターにあるステレオ音源であれば実施できる「センターの音だけを消してしまう」という方法を行いました。
この方法は音源がモノラルになってしまうというデメリットがありますが、うまくゆけばこれだけでボーカルの存在感をほぼ消すことができる可能性もあります。
しかしながら、今回はそうはいかず次のような問題が残ってしまいました。
・ベースがセンターにいたのでベースもほとんど消えた
・深めのリバーブがかかっていたので声の残響が広い周波数帯にかぶってしまっていた
・原音の段階で高音域の音割れが発生している箇所があり、ボーカルカットの処理過程でそれが目立つようになってしまった
これらをひとつずつ丁寧に手作業でできる範囲で対応してゆくことになりました。
・ベースに関してはボーカルの被らないギリギリの範囲の音域のみを抽出して、ボーカルレスの音源に被せて復活させた
・声のリバーブ残響においてはイコライザーの波形で目立つ部分をカットしたり、できるだけ他の楽器を目立たせて耳がそこに向かわないようにした
・音割れに関しても音量やEQをかなり細かく調整して目立ちにくくさせた
最終的に音のばらつきを抑えるためにコンプレッサーやリミッターをかけてできる限りボーカルが目立たない音源が完成いたしました。
知恵を絞って最善を尽くしてゆくこのような作業はやっていてもとても楽しいので嬉しいご依頼でした。
このようなご依頼もお待ちしています(ありがとうございました)