社会現象となったパペットアニメPUI PUI モルカーが映画化されるという話を耳にしたけど「思ってた映画化と違う」ってなったのが2021年6月の頭でしたかね…
PUI PUI モルカー全12話がテレビ放送されてからと言うもの、映画化を期待する声が多く上がっていましたが今回の映画化は「テレビで放送された全12話を映画館で一気に上映します」という内容で「思ってた映画化と違う!」ってなった人も多かったことでしょう。
でも、この映画化を企画した人は天才でした。
今の世の中の弱みと思われた部分を強みに変えた天才でした。
私が実際に体験した「想像以上に楽しい…企画した人は天才だ」の気持ちをまとめます。
すでにテレビで放送された作品であり各種配信サイトでも繰り返し観まくって、目を閉じててもシーンが脳内再生できるレベルにまで育ったファンも多いと思います。
飽きるほど観たものをわざわざ映画館で観る人ってどれほどいるのだろうか…
そんなこんなで普通ならちょっとピントのずれた企画になるところですが、映画のモルカーは応援上映の形がとられました。
応援上映というのは映画上映中に観客が声を出してもいいという企画で、気に入ったシーンに合わせて歓声をあげたり拍手をしたり、会場にいるファン同士が感情を共有しながら作品を鑑賞できる仕組みです。
アーティストのライブを映画館で生中継するライブビューイングが流行り始めた頃に応援上映も増えてきたなという感じなのでまだ浅い歴史なのかなと思います。
これらが珍しくない文化として定着した頃にコロナ禍に突入してしまって映画館での発声も不可能みたいな状態になったため応援上映も目にしなくなったなというところでした。
しかし、モルカーは声を出さずに応援する仕組みを考えたのです。
入場特典として握るとピューって音が出る笛が仕込まれたボールを配ってくれたのです。
上映中に声を発したいような場所でこのモルカーボールを握ることでピュー!ピュー!と応援できちゃうんです。
最近のライブとかである「応援は発声ではなく拍手で」のやつより数万倍たのしいぞこれ!
幼児が遊ぶようなボールにモルカーがプリントされている(目や車輪の部分は少し飛び出ているので特注品だとは思います)だけの商品ですが
・ボール自体がモルカーっぽくて可愛い
・ボールの鳴る音がなんとなくモルカーっぽい
というなかなかの親和性の高さで、「この手があったか!」というか「この企画を通して実現したのか!」に近い感動がありました。
モルカーはそもそも子供向けの作品でしたので時間帯によってはお子様も多くおられるそうなのですが、私たちは深夜の4DX上映に行ってきました。
深夜なのでちびっこは全然いない会場でした。
大人ばかりだとだれもぴゅーぴゅー鳴らさないのではって思うかもしれませんが、ここに来る大人はみんなぴゅーぴゅー鳴らすために来場しているのです。
上映前からあちこちで遠慮気味にぴゅーぴゅー鳴っています。
本来なら静かに鑑賞しなければならない映画館で合法的にビュービューと奇音を発することができる謎の背徳感…めちゃくちゃ良くないですか?
大人ばかりの会場は節度ある大人たちがそれぞれ他の人の雰囲気を伺いながら遠慮気味にぴゅーぴゅー鳴らしているのがめちゃくちゃ可愛かったです。
映画が始まる前の予告編でぴゅーぴゅーは加速し始めます。
劇場からの案内映像で「椅子を蹴らないでください」などの注意が流れるたびに「はーい!わかりました!」と言わんばかりに大人がみんなで「ぴゅー!」ってモルカーボールでお返事するんですね。
大人…めちゃくちゃ可愛いじゃん…
嵐のライブビューイングのCMが流れた時は嵐に興味がなさそうな人もビュービューと大歓喜で鳴らしていたのが面白かった!
モルカー本編が始まっていつものOPが流れた時には大人たちの持っているモルカーボールは大興奮!
ぴゅーぴゅーという音がギャーギャーに聞こえるレベルで大騒ぎでして、私の手元のモルカーボールも序盤でいきなり笛が飛び出して外れかけるという酷使ぶり!
上映中は大人たちがめちゃくちゃ楽しそうで、近くの知らない人とピューピューがユニゾンするとくすくすと笑い声が出ちゃったり、音楽に合わせて慣らしていると裏で入ってきて音楽に厚みを出してくる人もいたり、キメのシーンではみんなが一斉にビュー!!!って爆音を鳴らしたり、静かにそーっとしなきゃいけないシーンではだれもボールを鳴らさずに沈黙を作ったり、今までに経験したことがなかった謎の一体感がめちゃくちゃ楽しかった!
最初にあったお互いに探り探り鳴らしているような感じもすぐになくなり、周りの音を聞きながら自分の音で表現する新しいセッションみたいな形でもありました。
正直、15分くらいしたらそれ自体にも飽き始めるのですが、私レベルのモルカーボール使いになると笛を抑えたまま鳴らす瞬間に素早く指を滑らせて甲高い音を出したり、ギリギリ音が出るくらいの力でゆーっくりと握ってロングブレスしたりといろいろな技を生み出し表現のさらなる高みを目指すことにも没頭できました。
今までのような声かけやコロナ禍での拍手のみの応援では得られない謎の連帯感がすごく楽しかった!
途中からモルカーになりきったような気分で、終わった後は大人たちみんなが無言で「やりきったな」「お疲れ様でした」みたいなオーラを出しているのが最高でした。
モルカー本編と同じく「言葉がなくても気持ちが伝わる」が体現された会場で、お客さま同志も言葉がなくても気持ちが伝わる素晴らしい会場でした。
この企画を考えた人はほんと天才!
ちなみに、モルカーボールをおうちで鳴らしてみると結構な音量なのでびっくりします。
映画館だと本編の音声を邪魔しすぎず、逆に音声に埋もれることもないちょうどいい音量でしたので、モルカーボールはこの辺の音量にも拘って作っておられたのかなと感じました。
執筆時点で上映は残り数日というところですが、モルカー応援上映は想像以上に楽しいので迷ってる方にはぜひとも足を運んでほしいなと思います。
子供よりも大人が楽しめるんじゃないかなとも感じます。
映画自体は30分程度で終わり入場料もモルカーボール付きで1000円という優しいものです。
モルカーボールはなくなり次第配布終了なのですが、この企画はモルカーボールがないと楽しめないので行くなら絶対にボールがあるうちに!
ちなみに私は2000円払って4DX上映を見てみたのですが、4DXの魅力はよくわからないですね…
私は4DXはお勧めしません…
小学生くらいのお子様なら4DXに大興奮するのかなぁ…4DXという仕組み自体が大人向けではないと感じました。
そしてモルカーファンなら是非手に入れていただきたいのがパンフレットです。
中身が各話の絵コンテになっていて読み物としてもモノづくりの資料としても最高でした!
パンフレットは980円ですが映画のパンフレットとしては厚みもあってかなりお得に感じました!
こういうコロナ禍の弱点を楽しさに変える企画ってほんとすごいなって思います。
知恵を絞れば制限も楽しさに変えられるという素晴らしい例だと思います。
これを考えてくださった企画者と、実現のために動いてくださったスタッフの皆様にありがとうを伝えたいです!