SNSで何かをPRをするのが当たり前となった昨今、いろいろな公式アカウントが様々な内容で定期的に炎上してるのを目にします。
とばっちりのような炎上もありますが、今回のタイツの件のように「なぜ、わざわざ自分たちの顧客が不快に思うようなことをやっちゃうのか」という例も少なくありません。
今回のタイツ炎上に関しては2018年の紅茶炎上に根本が似ているなと感じる点も多いのですが、この機会に「公式SNSで気をつけるべきこと」や「今回の炎上で見習うべきこと」などをまとめてみました。
【想定する読者】
・企業のみならずバンドや個人イベントなども含めて公式アカウントを運営している人
・宣伝や広告のお仕事をしている人やそれに就こうとしてる人
・タイツ炎上事件に関する第三者の解釈に触れてみたい人
大前提として炎上には種類があるので対応すべき炎上か無視してもいいものかを判断しなければなりません。
ちょっと言い方が悪いのですがSNSには「暇な人」「過敏な人」「なんでも悪い方に捉える人」が多いのも事実です。
叩けるものがあれば自分に関係なくてもとりあえず叩いちゃおうという人もいます。
炎上をひとくくりにしてすべてに対応していたらきりがない面もあります。
PRのターゲット層が喜んでいるもので、法に触れたり他者の人権侵害になっていないもの
であれば、多少の批判や炎上は「一部の方の意見」として無視してもいいと思います。
逆に言えば
PRのターゲット層が不快に思っているものや、法に触れたり他者の人権を侵害しているもの
に関しては公式アカウントとして真摯に対応して自体を収束させるために動かなければならないでしょう。
SNSでマーケティングをする以上は「インパクトのあること」「今までと違うこと」が手段となる場合もあるので、前もって「どこまでが許容範囲か」を決めておきながら、炎上の種類を見極めて対応が必要かどうかを判断することが大切です。
これはいろいろなパターンがありますが、公式アカウント運営に以下のような傾向があれば危険信号です。
SNSでのマーケティングでは「バズってほしい」というキーワードが出ることと思います。
バズるという概念がとてもわかりやすいので、企画を進めるうえでバズるのが目的になってしまうことがあります。
バズるのが目的になると本来のターゲットを見失ったり、過激でセンセーショナルな方向に倒れがちになります。
バズるのは目的ではなく手段の一つなので何をするためにバズらせるのかを意識しなければなりません。
よくあるのがSNS担当が一人でかつ独断でやっちゃってるってパターンです。
また、社内に詳しいものがいないなどの理由でPRを外注している場合は業者選定を間違えて力や実績のないところに発注しているパターンもあります。
一番悪いのが社内にせよ外注にせよ「企画会議はやってるけど誰かが力を握りすぎていてNoと言えない環境ができている」というものです。
形だけは内部チェックが行われているのでついつい安心しちゃうやつですね…
こういう組織になってるとほかの部分にも悪い面が出ていると思うので、安易なSNS以前に組織や体勢全体を見直さなければならないかもしれません…
もちろん、それが一番大変なんですけど……
「企業らしからぬ自由奔放さ」を売りにしている公式アカウントもたくさんあります。
これってリツイートやいいねやフォロワーの数がひとつの指標になりがちで、これらが伸び悩むと発言や内容がどんどんエスカレートして自然と越えてはいけないラインを越えちゃうことがあるんですね…
「自由奔放な企業SNS」の先駆けである家電メーカーさんのアカウントもよくやらかしていますよね…
このおふざけがエスカレート現象は担当者が一人の場合や、成果を出さなければならない外注型の場合で起こりがちです。
また、自由にアカウントを使えるので公式アカウントでの公私混同に陥りやすい傾向にもあります。
慣れてくるとこのラインがどうしてもあいまいになりがちなので、SNS担当のPCモニタの上に「投稿前のチェック3か条」みたいなのを張り出して、越えちゃいけないラインを意識するのも方法のひとつかもしれません。
いろいろなPR手法があるので一概には言えませんが、公式アカウントはネガティブな投稿はしないというのが一般的なルールではあります。
ネガティブな内容というのは何かを批判したり、こき下ろしたりといった内容はもちろん、「何かを褒めるために他の悪いものを引き合いに出す」なども含まれます。(日本人はやりがち…)
このようなツイートをしてしまった時に陥りやすいのが、その発言を支持するコメントのみが可視化されすぎて「ネガティブ路線がうけている」と感じてそれに溺れがちなことです。
例えば、何かに対する批判ツイートをしたときに「いいぞ!良く言った!」などの共感コメントがつくことがあります。
発信者は自分のツイートが「うけている」と錯覚しがちなのですが、一方で「この公式アカウントはなんでそんなことを言うんだろう」という「物言わぬ反感」が多く蓄積されていくことも事実です。
わざわざ注意してくれる人がいればそれは親切なレベルで、物言わぬ反感に気付けなければ何も言わずに離れていくユーザーをたくさん作ってしまうと「よくわかんないけど急に業績が悪くなった」みたいなことも起こり得るのです。
これが炎上に繋がるか、物言わぬ反感に繋がるかは最初のコメント次第の部分もあるので運だったりもします。
「反感は可視化されにくい場合がある」は肝に銘ずる必要がありますね。
炎上したときに「嫌なら見るな(買うな・来るな)」が言えるかどうかがひとつのわかりやすい判断基準でしょう。(もちろん、実際に言うかどうかは別として)
例えば、自分たちの商品を一度も購入したことがなさそうでかつこれからも購入しそうにない人たちが怒っているけど、自分たちの商品のファンは喜んでいるような場合は「嫌なら見るな(買うな・来るな)」って言えちゃうと思います。
最近サブカル関連でよく見るパターンはこっちの方が多いかもしれません…
一方で常連さんやターゲット顧客が不快に思っているようなパターンで「嫌なら見るな(買うな・来るな)」をやっちゃうと業績が傾いちゃう可能性が極めて高いですよね。
今回のタイツの件や以前あった紅茶の件などはこちらにあたると思います。
「嫌なら見るな(買うな・来るな)」が言えない炎上はすぐに過ちを認めて常連さんとの関係改善のために尽力するのが良いでしょう。
炎上したときに「無視して時が経つのを待つ」というのはあまり良い方法ではなく、これよりもさらに悪いのは「公式の対応が二転三転する」という状況になることです。
対応が二転三転するのを避けるためにしっかり考えて素早く方針を出しましょうという意味なので、意固地になれという意味ではありません。
決めた対応方針の誤りに後から気づくこともあるでしょうから、その時は必要な修正は素早く行いましょう。
素早く正しい対応を見極めて、決めた方針を貫くというのは公式アカウント運営者に求められる一番大切なスキルかもしれません。
いろいろな考えの方がいてそれぞれが簡単に気持ちを発信できる世の中になっているので、「私はピーマンが好きです」とつぶやいただけでも批判コメントが届く可能性すらあります。
公式アカウントを運営するうえで多少の炎上は避けられないかと思いますが、その時の対処法だけは間違えないようにしてゆきたいものですね。
私の基準は先の「嫌なら見るな(買うな・来るな)」が当てはまらない炎上であれば、すぐに過ちを認めて改善策をセットで不快感を与えた方々に精一杯謝罪するというものにしています。
さて今回のタイツの炎上の件に関してですが、「本来の商品のターゲット層に不快な思いをさせた」ということは間違いなく、私の基準で言えば「嫌なら見るな(買うな・来るな)」が当てはまらない炎上だと感じました。
起こしてしまったことはともかくとして事後の対応は素晴らしかったと思います。
・企業の対応が素早かった
・よくあるテンプレ謝罪でなく、「自社のモラルが足りなかった」など踏み込んだ謝罪内容で誠意が込められていた
・他社に責任転嫁をしなかった(イラストレーターに非はないとして守った)
・自分たちの組織の過ちを認めて、企業理念をいま一度確認して信頼の回復を目指そうとしている
これらは謝罪に関してはお手本ともいえる素晴らしい対応だと感じました。
よくやっちゃうのが責任転嫁で「委託先が悪かった」などやっちゃうやつですが、あれって消費者の立場で言えば「いや、業者選定したのはお宅だしチェックする責任があるのもお宅でしょ?」ってなっちゃうんですよね…
私はこのタイツ炎上の謝罪文で以下の一文が一番心に刺さりました。
責任転嫁せず、自分たちの非を認めて、守るべき部分はしっかりと守る。
こういう企業なら過ちを犯しても今後改善してくれて、より良い企業になってくれるんじゃないかなって感じます。
ありきたりな宣伝だけでは成果を出しにくくなかった今だからそれに伴う失敗も多いですが、組織として正しいリカバー方法が供えられていたら失敗も経験値になると思います。
公式アカウントを運営している人、これから宣伝やPRのお仕事に就く人などは今回のタイツ炎上はとても勉強になるのでしっかりと学んでおきたいですね。