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[レビュー]ELEGOO MARS 4(光造形式3Dプリンタ)

2023/9/5 - 3Dプリンタ, レビューおすすめ度★★★★★ , 3Dプリンタ

ずっと気になっていたけどハードルが高いと感じて躊躇していた3Dプリンタにとうとう手を出しました!
私にとってはじめての3Dプリンタなのでレビューというほど他機種に対する知識がないのですが、逆に初心者だと”はじめての3Dプリンタ”をどう感じるかという方向性でお話ができると思います。

使い始めてから1ヶ月くらい、いろいろなものを十数回プリンタしたあとでの感想となります。

購入したのはELEGOO(えれごー)というメーカーのMars 4(マーズ4)というプリンタです。
初心者が買う低価格帯ならメーカーが三択くらいしかないかなと思うのですが、その中のひとつがELEGOOです。

なんでこれにしたかというと、購入前にネットで情報を集めていた時に初心者の最初の一台はMars3が良さそうという結論に至っていたのですが、ずっと気になりながらもタイミングを逸し続けていた時に新発売セールとして予約販売が始まったのが後継機であるMars4だったからです。

気になるトータルコストなのですが、MARS4を軸に付属品等の必要物を揃えても5万円くらいで最新の3Dプリント環境が整っちゃうんです。
3Dプリンタってめっちゃ高いイメージがありましたが、趣味に生きる人間ならばちょっと頑張れば買える価格ですよね。
ちなみに扱いがデリケートな機材なので、たとえ安くても最初の一台に中古品はお勧めできないかなという印象でした。
中古だと前ユーザーがどういう扱いをしてるかわかんないし、正しく動いていなくても正解がわかんないので。

電源を入れてLEDパネルをチェックをするとメーカーロゴなどが浮き上がってきます。
この上にレジンプールを置くのですが、レジンプールの底は透明なフィルムになっており光を通して、レジンをピンポイントで固めることができる仕組みです。
固まったレジンはプラットフォームにくっつくようになっていて、真っ逆さまで少しづつ引き上げられることで造形物が出来上がるという仕組みです。

2022年あたりの基準では3Dプリンタの解像度は「普通は4Kでめっちゃ綺麗、上位機種は8Kとかもある」みたいな雰囲気でしたが、MARS4は普及モデルなのに9Kという解像度を実現したというのが衝撃の一つなのです。
全世代のエントリー機を全部まとめて駆逐するような衝撃です。
出力可能サイズは156.36(幅) × 77.76(奥行) × 175(高さ) mmということで、3Dプリンタ未経験だとこれが大きいのか小さいのかもわからない…
使ってみてわかったのは、1/12スケールの小物を作るくらいならこの出力サイズでも困らなくて、1/12スケールのフィギュアならパーツを分けて2〜3回に分けて出力する感じかなという印象でした。
知識がない時に「2〜3回に分けて出力する」と聞くと余計な作業が増えているという印象を受けるのですが、3Dプリンタはパーツの形状にごとに綺麗に見える出力方向に傾向があって、綺麗に見える方向にパーツの出力向きを変えていると結局複数回に分けて出力することになるんですよね。
そして、小さな単位で印刷することで印刷ミスのダメージを最低限にできる可能性もあります。

フィギュア等を量産して販売したいと考えている方は大きいプリンタの方が量産効率が上がると考えるかもですが、量産する場合はこのサイズのプリンタを複数台買った方がいいのではという気もしました。
出力サイズが大きいプリンタは、でっかいワンパーツを出力したい時の選択肢でしょうね。

筐体は思ったよりも小さくて机の上に二次硬化機(後ほどご案内)と一緒に並べても余裕のスペースです。
めちゃくちゃハードルが高い機材だと思ってたけど、触ってみるとそうでもなかったというのがプリント初成功時の印象でした。

3Dプリンタに関する印象

初心者の方で同じ印象を持っている人にとって誤解を解くきっかけになるかもしれないので、ここで私がもっていた3Dプリンタに関する印象をざっと書きますね。

触る前までの印象

・プリントにめっちゃ時間がかかって、時間がかかった結果印刷ミスということが多そう
・レジン選びが大変そうで、選んだレジンによっては造形や強度がやばいことになるらしい
・選んだレジンによって印刷設定を変えなければならくて、その印刷設定が割と手探り
・印刷ミスするたびにレジンプールを大掃除しないといけなくて大変
・その他、掃除やメンテナンスがすごく大変
・無事に出力できても、出力品を洗浄したり二次硬化させたり大変
・部屋がレジン臭くなるので四六時中換気が必要?
・とにかくお金と時間がかかる

実際に3Dプリンタを使った後の印象

・思ったよりも簡単だった
・プリントに一晩くらいかかると思ってたけど、自分の出力したいものは30分から2時間くらいで出せる
・販売店(SK本舗)が売っているオリジナルレジンで特に不自由はなかった、そのあとELEGOOのレジンを使ってみたけど同じく不自由はなかった。Amazon等で謎のレジンを買わない限りは大きなトラブルはなさそう。
・今のところ、印刷設定でいじったのは「最初の露光時間」(後述)くらい。
・水洗いレジンを使うとさほど手間ではなかった
・出力中はほとんど臭くない、一番くさいのはレジンを拭き取った後のティッシュ類でこれらはビニール袋に密封して捨てた方がいいかも
・お金がかかると思ってたけど、お遊び程度の出力だったらレジン500mlでもそれなりに遊べる量だった

きちんとマニュアルに目を通して、ネット上のよくあるトラブルなどを事前に学んでおけばなんら問題ないレベルの簡単さでした。

MARS4の付属品

必要な道具はプリンタが届いてから必要に応じて買おうと思っていたのですが、MARS4は付属品が想像以上に充実していて追加購入するものは少なかったです。

付属品

ゴム手袋 … レジンを素手で触ると良くないので触る時に手を保護する
マスク … レジンを吸い込まない方がいいらしいのでマスクもする
レンチ類 … プラットフォームの固定等でプリントのたびに使うやつ
クリーニングクロス … 液晶部分を拭いたりする
ペーパー漏斗 … 余ったレジンをボトルに戻す時にゴミや固まったレジンのかけらなどがボトルに戻らないようにする使い捨ての漉し器付き漏斗です。ただ、レジンのボトル形状によっては付属のものがめっちゃくちゃ使いにくいのでタイミングを見て別途用意した方が良いかも。
USBメモリ … プリントデータをプリンタに読み込ませるために使う、付属のものは形状的に不安があるので余裕があれば別途用意した方がいいやつ。(後述)
プラ製スクレーパー … 出来上がった造形物をプラットフォームから剥がすものかと思いきや、このプラ製のものでは歯が立たない。プリントに失敗した時にレジンプールの底に張り付いた造形物を取るのかと思って使ったらフィルムに傷がついちゃった。ちょっと使い道不明。
金属製スクレーパー … こっちはプラットフォームからの引き剥がしでも十分に歯が立つやつ。ゴムハンマーを用意してお尻をガンガン叩いて使ってもいいと思う。

付属しないので別途買った方がいいもの

私が3Dプリンタを始めた時に別途買ったものなどをまとめて書きますが、この中で必須のものはレジンだけでした。
あった方がいいものの多くがダイソーで手に入るものなのも助かります。

レジン … お試し用のレジンなどは付いていないので別途購入する必要がある。初心者のお試しプリントは取り扱いが簡単で洗浄液等も不要な「水洗いレジン」にしておいた方がいいです。レジンはときどき半額セールみたいなのもやってますね。

二次硬化機 … 出来上がった造形物は脆いのですが、出力後に紫外線を当てることで強度が増すようになっていてそれを二次硬化といいます。こだわるとこれも奥が深い部分で太陽に当てて自然に硬化させてる人もいれば、均等に硬化させることにこだわって二次硬化機を自作する人もいます。
いろんな方法があるので迷いますが、初心者はいったん”くるくる二次硬化機”にミラーシートなどを貼って様子を見るくらいでいいのかも。(均等に硬化させないと造形物が反ることもあるので、ミラーシートで全体的に反射さえる作戦)


「こんなもの使ったらダメ!」という考えの人もいて、その理由も一理あるので初心者でも拘りたいという人は二次硬化の方法を調べてみた方がいいかも。

ゴムハンマー … スクレーパーだけで造形物をプラットフォームから剥がすのが難しい時に、スクレーパーのお尻をガンガン叩いて使うもの。今のところ私にとっては必須アイテムでダイソーで買った。

ゴーグルやメガネ … ゴムハンマーでガンガン叩いてたら造形物のかけらやレジンがまぁまぁ飛び散ります。手袋して触らないとダメなレベルのものが目に入ったら大変そうなので目を保護した方が良さそう。ダイソーで買った。

ステンレスバットやステンレスボウル … 出力品を置いたり洗ったりする時に使います。レジンは有害なのでもしもキッチンにあったとしても料理用のものと共用しない方がいいですね。ダイソーで買った。

無水エタノール … レジンが付着した道具の洗浄に使う。レジンがたっぷりついたものをこれで洗うとだいぶヤバそうな匂いがするので換気はしっかりと。想像よりもお値段が高いのでじゃぶじゃぶ使わずにここぞという時に使ってる。

マジックリン … 私はまだ使ったことがないのですが、プロの方々が名指しでおすすめしているのがマジックリン。レジンが硬化した汚れもこれで落とすことができるらしくて、3Dプリンタにレジンをこぼしたことに気づかずにそのまま固めてしまった時などに使うらしい。成分が似ていればなんでも良いのかもだけど、プロの方が口を揃えてマジックリンと言ってるのでわからなければマジックリンが無難かと。

キッチンペーパー … ティッシュだと糸屑が出るのでティッシュで拭いた後の仕上げ拭きなどに使う。

サンプルモデルの出力

USBメモリに入っていたサンプルモデルを、直径3センチくらいにしてプラットフォームベタ付の真っ逆さまで出力してみました。
水洗いレジンを使いましたが白く濁っている部分は余分なレジン洗浄が足りなかったところです。
台座の底部がボコボコになっているのはプラットフォームベタ付のために剥がす時に傷をつけてしまったからです。
これらを差し引いてもめっちゃくちゃ綺麗な出力だと思いませんか?
もちろん、磨いたりはしていなくて水洗いして二次硬化させただけの状態でこれですよ。

3Dプリンタは高さの方向に向かってバームクーヘンのような層が出るものなのですが、肉眼では確認できないレベルです。(埃っぽいのはごめんなさい、出力したまま1ヶ月くらい放置してたもので…)

今回の出力方向では天井部分がフィルムにピッタリとくっつくので、フィルムが新鮮であればテッカテカのつやつやな状態で出力されます。
そしてばっちりテッカテカのつやつやで出力されました。

付属のスライサーソフトについて

3Dプリンタは3Dモデルのデータをそのまま印刷できるわけではなくて、3Dモデルを印刷できる形式に変換した上で、プリントの条件や設定などをセットしたデータを用意しなければなりません。
これを行うためのソフトがスライサーソフトです。
必要な処理の大半をソフトに自動でやってもらってから気になる部分を手動で手直しするような使い方なので、使い方が難しいとかではありません。
MARS4にはVoxeldance TangoとCHITUBOXの2種類が付属しており、お好みで使えばいいのですが私は情報が多かったCHITUBOXの方を使っています。
ただ、CHITUBOXはちょいちょいバグやクセみたいなものがあるようなので、おかしいなと思うことがあればネットで情報を探してみた方が良いかも。

MARS4だから良かったこと

造形物が思い通りに出ただけでも感動するレベルの初心者で、比較する知識も経験もないので「MARS4だからよかった!」かどうかはわかりませんが、機械の特徴から判断してよかったなと感じた部分です。

・出力が恐ろしく綺麗。他の方が3Dプリンタで出力したものを見たり買ったりしたことがあるけど、Mars4に関しては素人が適当にやってこんなに綺麗に出るのかと驚いた。

・本体のカバーだけでなく、小型の空気清浄機が付いているので出力中もほとんどレジンの匂いがしない(もちろん、カバーを開けるとレジンくさいのでこの時は換気が必要)

奥にあるELEGOOロゴの入った白いボックスが空気清浄機です。
このおかげで出力中の匂いはほとんど気になりません。

・プリント中の音はちいさな扇風機くらいのファンの音と上品なモーターの駆動音くらいなので、耳が慣れれば無視できるレベル。(ブザーはうるさくてちょっとびっくりする)
・マニュアルが日本語でまぁまぁしっかりしているので、ちゃんと読めばサンプルモデルは印刷できそうな感じ。(後述のスライサーの設定は重要かも)

気になるところ

・個体差かもしれないけどUSBポートがゆるくて接触不良を起こしがち。

付属のUSBメモリだと重さがかかりやすいようでちょっと触ってみるとコネクタ部分でグラグラと接触不良を起こしているのがわかります。
プリント中に接触不良が起きるとデータ転送エラーになってそのままプリントミスとなるので、USBメモリは軽量で長さが短いもの(無駄に重心が外側にかからないもの)にした方が事故が減るかも?
別の3Dプリンタでも似たようなトラブルがあるようで、人によっては延長ケーブルを使ってUSBメモリは床に直置きできるように対策している場合もあるそうです。

印刷ミスの一例

印刷を何度か試したのですが、初心者ながらも成功率は7〜8割です。
印刷ミスは主にスライサーソフトの設定が原因でした。

印刷物がプラットフォームに食いつかない(レジンプールの底に沈む)

最初の印刷ミスはサンプルモデルを初めて印刷しようとした時なのですが、スライサーのデフォルト設定では印刷物がプラットフォームに定着しませんでした。
なんか、MARS4はプラットフォームの食いつきがいいことを売りにしていたようですが、デフォルトだとダメだったので「最初の露光時間」をしっかりと増やしてやることで解決しました。

初期値を覚えていないのですが、「初期層の露光時間」をたっぷり60秒にしてみました。(その他項目はデフォルトのまま)
長すぎるかもしれませんが、今のところプラットフォームにくっつかないということはありません。

スライサーソフトの自動サポートだけだとうまく出力できない

まだ理解がふんわりなので上手に説明できないのですが、印刷中に宙に浮かんでしまう部分などにはサポート柱をつけてあげないと部分的な印刷ミスにつながります。
スライサーソフトが自動でつけてくれる機能があるのですが、この自動があまりあてにならないんです。
自動でサポートをつけてもらったあとで、自分でチェックしながら宙に浮きそうなところや重さや太さがありそうな部分に手動でサポートをつけるのが鉄則っぽいです。

基本的にプラットフォームベタ付はダメっぽい

ひらたくて薄いものなどはレジンの節約とかの気持ちでプラットフォームにベタ付けで出力したくなっちゃうのですが、私の場合は「初期層の露光時間」をたっぷり60秒にしている関係なのか食いつきが良すぎて剥がす時にモデルが傷ついたり割れたりしちゃいます。
モデルの裏面にプラットフォームのパターンもがっちり残るので、プラットフォームベタ付けは基本的にはやらない方が良さそう。
1/12スケールとか、1/24スケールの小物をプリントしていたのですが、プラットフォームからの取り外し時に破損したパターンがちらほらありました。

プールの底のフィルムの扱いだけは要注意っぽい

レジンプールの底が光を通すための透明フィルムになっているのですが扱いは要注意です。
ここが汚れていたり傷ついていると出力にそのまま反映されることがありますし、万一穴があくとレジンが3Dプリンタ本体に溢れてしまうことすらあります。
最初はびっくりするくらいの透明度なのですが、ここがかなりデリケートでちょっと当たっただけで傷がついたりします。
私は最初のミスプリントでプールの底に張り付いたミス造形物を取り除く時に、いきなり引っ掻き傷をつけてしまいました。
このフィルムは使っているうちに劣化して曇ってきたら交換する必要があるものなので、万一破損してしまっても交換しちゃえば良いのですが凡ミスによる無用な出費と手間は避けたいですよね。

まとめ

ベテランの方から見るといろんな意見があるかもしれませんが、今このタイミングで初心者が初めて3Dプリンタに手を出すのならばMARS4でいいんじゃないかと思います。
どんな道具でも比較対象の基準となるアイテムがあったりしますが、これからしばらくはMARS4がその基準になるんじゃないかなとも想像しました。

Amazonでは頻繁にセールが行われており、セールがない時は10%以上の割引クーポンが出ていたりもします。
気になる人はこまめにチェックしてみると良いかもしれませんね。

私は今はオリジナルデータでフィギュアを作ろうと格闘しています。
うまく出力までできたらまたご紹介しますね!

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